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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)17859号 判決

14339号事件原告・17859号事件原告 開成秀妹

14329号事件原告・17859号事件原告 開成慕賢

14339号事件被告・17859号事件被告 荘華彩

14339号事件被告・17859号事件被告 王清兆

17859号事件被告 王善利

17859号事件被告 王福朱

17859号事件被告 ○○工業株式会社

主文

一  被告荘華彩は、原告らに対し、別紙物件目録1第1記載の各物件につき、昭和62年3月4日遺留分減殺を原因とし、原告らの持分割合をそれぞれ12分の1とする所有権一部移転登記手続をせよ。

二  被告荘華彩は、原告らに対し、別紙物件目録1第2記載の各物件の被告荘華彩持分につき、昭和62年3月4日遺留分減殺を原因とし、原告らの持分割合をそれぞれ18分の1とする持分一部移転登記手続をせよ。

三  被告王清兆は、原告らに対し、別紙物件目録1第2記載の各物件の被告王清兆持分につき、昭和62年3月4日遺留分減殺を原因とし、原告らの持分割合をそれぞれ同目録第2の1記載の土地につき21億4595万8212分の4201万7619、同目録第2の2記載土地につき1億0995万3323分の215万2873、同目録第2の3記載の土地につき9677万6285分の189万4868とする持分一部移転登記手続をせよ。

四  原告らと被告王清兆との間において、原告らがそれぞれ別紙物件目録1第8の1記載の株式につき495万分の29万0761、同目録第8の2記載の株式につき42万分の2万4671、同目録第8の3記載の出資につき118万分の6万9313の準共有持分権を有することを確認する。

五  原告らと被告王清兆との間において、原告らがそれぞれ別紙物件目録1第9の1記載の預金債権の1301万8737分の76万4716を、同目録第9の2記載の預金債権の6623分の389を有することを確認する。

六  被告王清兆は、原告らに対し、それぞれ金1万7622円及びこれに対する昭和62年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

七  被告荘華彩は、原告らに対し、それぞれ金31万4684円及びこれに対する昭和62年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

八  原告らと被告荘華彩との間において、別紙物件目録1第11記載の各ゴルフ会員券につき、原告らがそれぞれ12分の1の準共有持分権を有することを確認する。

九  原告らの別紙物件目録1第3ないし第12記載の物件が王同全の相続財産であることの確認請求を却下する。

一○ 原告らのその余の請求はいずれも棄却する。

一一  訴訟費用は、甲、乙事件を通に、これを5分し、その2を原告らの、その余を被告荘華彩及び被告王清兆の負担とする。

一二  この判決は、第六及び第七項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(甲事件について)

一  請求の趣旨

1 主文第一項及び第二項と同旨

2 被告王清兆(以下「被告清兆」という。)は、原告らに対し、それぞれ別紙物件目録1第2記載の不動産(以下「物件1第2」という。他の物件もこの例による。)の所有権の共有持分36分の1について、所有権移転登記手続をせよ。

3 訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

(乙事件について)

一  請求の趣旨

1 原告らと被告荘華彩(以下「被告荘」という。)、被告清兆、被告王善利(以下「被告善利」という。)及び被告王福朱(以下「被告福朱」という。)の4名(以下「被告荘ら4名」という。)との間において、物件1第3ないし第12が、被相続人王同全(以下「同全」という。)の相続財産であることを確認する。

2 被告○○工業株式会社(以下「被告○○」という。)は、原告らに対し、物件1第3及び第4につき、それぞれ12分の1の共有持分の移転登記手続をせよ。

3 被告○○は、原告らに対し、物件1第7につき、それぞれ別紙物件目録2記載の共有持分の移転登記手続をせよ。

4 原告らと被告福朱との間において、物件1第5の1の借地権につき、原告らが、それぞれ12分の1の準共有持分を、同第5の2の建物につき、それぞれ12分の1の共有持分を有することを確認する。

5 原告らと被告清兆との間において、物件1第6の1の高架下使用権につき、原告らがそれぞれ12分の1の準共有持分を、同第6の2の施設物につき、それぞれ12分の1の共有持分を有することを確認する。

6 原告らと被告清兆との間において、物件1第8につき、原告らが、それぞれ12分の1の準共有持分を有することを確認する。

7 (一) 原告らと被告清兆との間において、物件1第9の1及び2につき、原告らがそれぞれ12分の1を有することを確認する。

(二) 被告清兆は、原告らに対し、それぞれ金2万5000円及びこれに対する昭和61年8月17日以降支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

8 被告荘は、原告らに対し、それぞれ金1120万9741円及びこれに対する昭和61年8月17日以降支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

9 主文第八項と同旨

10 被告荘は、原告らに対し、物件1第12の1につき、それぞれ120万分の9097の共有持分及び物件1第12の2につき、それぞれ12分の1の共有持分の移転登記手続をせよ。

11 訴訟費用は、被告らの負担とする。

12 第7項(二)及び第8項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

原告らと被告荘ら4名との間において、物件1第3ないし第12記載の財産が、被相続人同全の相続財産であることを確認するとの請求を却下する。

(本案の答弁)

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

(甲事件について)

一  請求原因

1 (一)同全(国籍中華民国)は、昭和61年8月16日死亡した。

被告荘は、同全の妻であり、被告清兆、被告善利及び被告福朱は、同全と被告荘との間の子である。

原告らは、同全と開成美恵子との間の子であり、原告らが同全の実子であることは裁判上の認知をもって確定した。

同全の相続人は原告ら及び被告荘ら4名の6名である。

(二) 同全は中華民国国籍であるから、中華民国民法1065条1項、1141条、1144条1号、1223条に基づき、各人の相続分の割合はそれぞれ6分の1であり、遺留分の割合は12分の1である。

2 同全は、昭和59年5月17日、左記内容の公正証書遺言(以下「本件遺言」という。)をした。

(1) 物件1第1を被告荘に相続させる。

(2) 物件1第2を被告荘及び被告清兆に相続させる。共有持分の割合は、被告荘が3分の2、被告清兆が3分の1とする。

(3) 物件1第3及び第4を、被告清兆、被告善利及び被告福朱に相続させる。共有持分の割合は各3分の1とする。

(4) 物件1第5を被告福朱に相続させる。

(5) 物件1第6を被告清兆に相続させる。

(6) 物件1第7を被告善利に相続させる。

(7) 現金、預貯金、有価証券を被告清兆に、家財その他動産一切を被告荘に相続させる。

(8) その他定めのないものは、被告荘に相続させる。

3 物件1第1、第2、第8、第9、第10の2ないし4及び第11は、いずれも同全の遺産である。

4 同全は、昭和36年8月1日、物件1第3の店舗を建築し、所有権を取得した。

同全は、昭和36年4月17日、物件1第4の土地を購入した。

同全は、遅くとも昭和49年7月1日ころには、物件1第5の1の借地権を取得し、同第5の2の建物を所有していた。

同全は、昭和31年4月1日、日本国有鉄道から物件1第6の1の高架下使用権を取得し、同第6の2の施設物を建築した。

同全は、昭和30年4月2日に物件1第7の2及び5の土地を、昭和37年12月3日に物件1第7の6ないし12の土地を、昭和38年3月30日に物件1第7の17の土地を、昭和38年11月20日に物件1第7の1、3及び4の土地を、昭和42年11月1日に物件1第7の13ないし16の土地を、昭和45年5月30日に物件1第7の18の土地をそれぞれ購入した。

同全は、昭和57年4月2日、物件1第12の土地建物を購入した。

したがって、これらの物件も同全の遺産である。

5 物件1第10の1は、同全の死亡退職金として、被告○○から被告荘に支払われたものであるが、同全の遺産に含まれるべきものである。

6 物件1第1については、同全から被告荘に対し、物件1第2については、同全から被告荘及び被告清兆に対し(被告荘の持分3分の2、被告清兆の持分3分の1)、それぞれ相続を原因とする所有権移転登記がされている。

7 原告らは、昭和62年3月4日、被告荘ら4名に対し、遺留分減殺の意思表示をした。

8 物件1第1ないし第12の同全が死亡した昭和61年8月16日当時の時価は、別紙物件価格表のとおりである。

9 よって、原告らは、被告荘に対して物件1第1、第2について、被告清兆に対して物件1第2について、それぞれ遺留分減殺を原因とし、請求の趣旨記載の割合による所有権一部移転登記手続を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1(一)の事実は認めるが、同(二)の主張は争う。中華民国民法は、配偶者と子の間で相続分、遺留分割合を同じとするが、妻の権利保護に欠け日本の公序に反する。また、中華民国民法は、嫡出子と非嫡出子の相続分、遺留分割合を同じとするが、この点も婚姻の純潔を尊重する日本の公序に反する。したがって、相続分、遺留分割合については、日本民法を適用すべきである。

2 請求原因2及び3の各事実は認める。

3 請求原因4の事実はいずれも否認する。

(一) 物件1第3、第4、第5の2、第6の1及び第7は、○○公司がもと所有していた財産であり、同全の遺産ではなかった。 ○○公司は、同全及び被告荘が王加玉らを加え合計7名で昭和20年代に始めたパチンコの機械の製造等の共同事業を、昭和37年に民法上の組合に組織を整備したものである。民法上の組合は法人格を有しないため、○○公司は、事業活動、財産の取得等を同全名義で行っており、物件1第3、第4、第5の2、第6の1及び第7の不動産の登記名義を同全としていた。

昭和59年ころ、○○公司の組合員は、同全、被告荘及び被告善利の3人になっていたが、税務署の指導もあり、○○公司の財産を同全が代表取締役をしていた被告○○に組み入れることになり、昭和59年4月10日、同全の○○公司に対する地位を被告○○が2970万0266円で買い取り、更に同年12月27日、被告○○が被告荘に1654万2820円、被告善利に117万1132円をそれぞれ支払い、被告荘及び被告善利は○○公司から脱退し、○○公司の財産は全て被告○○の単独所有となった。

したがって、物件1第3、第4、第5の2、第6の1及び第7の不動産は、その所有名義にかかわらず、昭和59年12月27日からは被告○○の所有財産となったものである。

なお、右各物件について、本件遺言に基づき被告清兆らに一旦相続登記を経由した後に被告○○への移転登記手続が行われているが、これは同全の死亡後、同全名義を被告○○名義に直接変更する手段がなかったため、便宜上とった手段にすぎない。

(二) 物件1第5の1の借地権は、当初設定を受けたのが○○公司なのか被告○○かは不明であるが、昭和58年10月1日には、被告○○が地主である角川法明との間で借地契約を締結しており、同全の遺産ではない。

(三) 物件1第6の2の施設物は、当初の所有権者が○○公司か被告○○かは分からないが、昭和52年ころには被告○○の所有となった。

(四) 物件1第12の土地建物は、被告荘と被告清兆が、代金を均等に分担する約束で、昭和56年7月3日ころ、○○建設株式会社から代金1億2968万円で購入したものである。

4 請求原因5については、物件1第10の1の死亡退職金が被告荘に支払われたものであることは認めるが、被告○○の内規上、死亡退職金は配偶者、第一子の順に取得すると規定されているため、被告荘が自己固有の権利として取得したものであり、同全の遺産には含まれない。

5 請求原因6及び7の各事実は認める。

6 請求原因8については、不動産に担保権等の負担がない場合の評価額として認める。本件の物件には、根抵当権が設定されているから、本件における相続の対象たる積極財産の価格としては、極度額合計41億9800万円を控除する必要がある。

三  抗弁

1 同全は、相続開始時、1億8925万0557円の債務を負担していた。

2 同全の相続費用は、左記のとおり合計6億3545万5500円であり、これらは、原告らの遺留分算定に際し、控除すべきものである。

(1) 相続税  5億3694万1100円

(2) 葬儀費用   8593万8000円

(3) 遺言執行登録税 857万6400円

(4) 遺言執行者報酬 400万円

四  抗弁に対する認否

1 抗弁1は認める。

2 抗弁2のうちの各費用の金額については不知。

相続費用を控除すべきであるとの主張は争う。遺産が被相続人の死亡時に遡って相続人の帰属財産となる法制の下では、相続費用は相続財産の帰属が決まれば帰属者の負担とすべきものであり、遺留分算定に際し控除させる性質のものではない。

(乙事件について)

一  請求原因

1 甲事件の請求原因1ないし8と同じ

2 被告荘ら4名は、原告らが提起した遺産分割調停事件において、物件1第3ないし第12が同全の遺産であることを否定した。

3 被告○○は、本件遺言に基づき物件1第3、第4及び第7の不動産を取得した被告清兆、被告善利及び被告福朱から右物件を譲り受けた。

被告○○の代表取締役である被告荘は、右譲受けの際、原告らの遺留分を害することを知っていた。

右各物件については、被告清兆、被告善利及び被告福朱が本件遺言に基づき相続登記をした後、真正な登記名義の回復を原因として、被告清兆らから被告○○への所有権移転登記がされている。

原告らは、被告○○に対し、本件訴状により遺留分減殺を行う旨の意思表示をし、本件訴状は、平成元年1月23日被告○○に到達した。

4 よって、原告らは、請求の趣旨記載のとおり、被告荘ら4名に対し、物件1第3ないし第12が同全の相続財産であることの確認を、被告荘に対し、遺留分減殺により取得した金員及びこれに対する同全の相続開始日の翌日である昭和61年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅廷損害金の支払、物件1第11につき遺留分減殺により取得した準共有持分を有することの確認、物件1第12につき遺留分減殺を原因とする所有権一部移転登記手続を、被告清兆に対し、物件1第6の1につき遺留分減殺により取得した準共有持分を有することの確認、物件1第6の2につき遺留分減殺により取得した共有持分を有することの確認、物件1第9の1、2につき遺留分減殺により取得した割合の債権を有することの確認、遺留分減殺により取得した金員及びこれに対する同全の相続開始日の翌日である昭和61年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅廷損害金の支払を、被告善利に対し、物件1第8につき遺留分減殺により取得した準共有持分を有することの確認を、被告福朱に対し、物件1第5の1につき遺留分減殺により取得した準共有持分を有することの確認、物件1第5の2につき遺留分減殺により取得した共有持分を有することの確認を、被告○○に対し、物件1第3、第4、第7につき遺留分減殺を原因とする所有権一部移転登記手続をそれぞれ求める。

二  被告荘ら4名の本案前の主張

原告らは、物件1第3ないし第12につき、被告荘ら4名に対し、同全の相続財産であることの確認を請求しているが、原告らは同一物件につき右確認請求とは別に遺留分減殺請求権を行使したことを理由に移転登記手続等の具体的請求をしているから、右確認請求は確認の利益を欠き、不適法なものとして却下されるべきである。

三  被告荘ら4名の本案前の主張に対する原告らの答弁

いずれも争う。

原告らは、同全の子として正当な権利を有しているから、同全の相続財産について、被告荘ら4名が相続財産であることを争う以上、それが相続財産であるか否かについて確認を求める法的利益がある。

また、被告荘及び被告清兆は、原告らの具体的な遺留分は、同全が相続開始時に有していた財産の価額から債務を控除して算定をすべき旨主張しているから、遺留分算定の基礎となる財産の価額を確定するために、相続財産であることの確認を求める利益がある。

四  請求原因に対する認否

1 請求原因1については、甲事件の請求原因1ないし8に対する認否と同じ。

2 請求原因2のうち、物件1第8、第9、第10の2ないし4、第11が同全の遺産であることは認めるが、物件1第3ないし第7、第10の1が遺産であることは争う。

3 請求原因3のうち、物件1第3、第4及び第7について、本件遺言に基づき被告清兆らが相続登記を経由した後に、真正な登記名義の回復を原因として被告○○への所有権移転登記がされたことは認めるがその余は否認する。右各物件は、甲事件の請求原因に対する認否3(一)で主張したとおり、もともと○○公司の財産であったところ、被告○○が○○公司から譲り受けたものであり、被告○○が被告清兆らから譲り受けたものではない。

また、仮に被告○○が右物件を原告主張のように被告清兆から譲り受けたものであるとしても、中華民国民法では、第三者に対する遺留分減殺請求は認められていないから、被告○○に対する遺留分減殺は許されない。

五  抗弁

1 甲事件の抗弁1、2と同じ

2 消滅時効

原告らの被告○○への遺留分減殺の意思表示は、同全の相続開始から1年以上経過した後にされた。

仮に、第三者に対する遺留分減殺につき、日本民法が適用されるのであれば、被告○○は右時効を援用する。

六  抗弁に対する認否

1 抗弁1については、甲事件の抗弁1、2に対する認否と同じ

2 抗弁2については争う。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

第一甲事件

一  請求原因について

1  請求原因1(一)の事実については、当事者間に争いはないが、本件の準拠法につき争いがある。

本件は昭和61年に死亡した同全の遺産相続をめぐる紛争であり、同全が中華民国国籍であることから、原則として平成元年法律27号による改正前の法例(以下「旧法令」という。)25条によって被相続人の本国法である中華民国民法が適用されることになるが、被告らは、中華民国民法は、配偶者と子の法定相続分が同じ割合である点及び嫡出子と非嫡出子の法定相続分が同じ割合である点で日本国の公序良俗に反するから、相続分及び遺留分の割合に関しては日本民法を適用すべきである旨主張している。

本件において、中華民国民法を適用すれば、同全の妻である被告荘、同全の嫡出子である被告清兆、被告善利、被告福朱、同全の非嫡出子である原告らは、いずれも法定相続分は6分の1であり、遺留分割合は12分の1となる。これに対して、日本民法を適用した場合は、被告荘の相続分は2分の1で、遺留分割合は4分の1であり、被告清兆、被告善利、被告福朱の相続分はいずれも8分の1で、遺留分割合は16分の1であり、原告らの相続分はいずれも16分の1で、遺留分割合は32分の1となる。

相続分ないしは遺留分割合は、各国が当該国の家族制度、風俗慣習等それぞれの事情に応じて定めているものであるから、旧法例25条適用の結果、相続分や遺留分割合に日本民法を適用した場合との間で差異が発生することは、法が当然に予想し是認しているところであり、中華民国民法の相続分ないし遺留分の割合に関する規定が原告らの主張のようなものであるからといって、直ちに相続分ないし遺留分の割合に関する同法の右規定の適用が排除されるものではなく、右規定を適用すると、わが国の私法的生活において維持されなければならない公の秩序、善良の風俗が害されるおそれがある場合に限り、旧法例30条によって外国法の適用が排除されるにすぎないというべきである。

本件においては、乙第33号証及び被告荘本人尋問の結果によれば、同全及び被告荘が昭和20年代から日本で生活し、生活基盤を日本に持つ者であることが認められ、また、被告荘が同全の財産形成に多大な貢献をしたものであるとしても、被告荘らは中華民国国籍であること、後記認定のとおり、同全の相続財産総額は36億円を越えるものであり、本件遺言により被告荘が取得した財産の額は30億円、被告清兆が取得した財産の額は8億円をそれぞれ越えるものであること、本件は原告被告間で相続分割合で遺産分割を行うものではなく、原告らが遺留分減殺を求めている事案であり、右被告らが取得した財産の額から後記認定の右各被告が負担すべき遺留分の額(後に認定するとおり、被告荘は原告一人につき2億5496万3939円、被告清兆は原告一人につき4723万2833円)を控除したとしても、右被告らの取得した財産の割合は、日本民法の規定にしたがって計算した法定相続分の割合(被告荘は2分の1、被告清兆は8分の1)を相当に上回るものであること等に照らすと、本件に中華民国民法を適用し、相続分や遺留分割合を導いたとしても、わが国の私法的生活において維持されなければならない公の秩序、善良の風俗を危うくするおそれがあるとは認められない。

したがって、本件においては、相続分ないしは遺留分割合に関し日本民法の適用をすべきである旨の被告らの主張は採用できない。

2  請求原因2、3、6、7の各事実については、当事者間に争いはない。

3  請求原因4について

(一) 原告らは、物件1第3ないし第7及び第12が同全の遺産である旨主張し、これに対して被告らは、物件1第3ないし第7は○○公司又は被告○○が、物件1第12は被告荘と被告清兆がそれぞれ取得したものであり、いずれももともと同全のもと所有物件ではなかった旨主張し争っている。

そして、甲第1、第11、第12、第16ないし第33、第36ないし第41、第44、第47号証、乙第1号証によれば、物件1第3、第4、第7は、原告主張の日付で同全が取得した旨の登記がされていること、物件1第3、第4、第5の2及び第7のうち13ないし16を除いたものについての固定資産台帳の所有者欄に同全と記載されていること、物件1第3ないし第7については、本件遺言に被告荘らに相続させる旨記載されていること、物件1第12は、同全の相続税申告書に、相続税がかかる財産として記載されていることなどの事実が認められる。

(二) しかしながら、甲第34、第35号証、乙第2ないし第12号証の2、第23ないし第33号証、証人中村伸彦、同松来修作及び同杉本左衛門之介の各証言並びに被告荘の本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(1) 同全及び被告荘は、王加玉らを加え合計7名で昭和20年代からパチンコの機械の製造、不動産業等の共同事業を○○公司として行っていたが、昭和37年ころ、○○公司は、同全が昭和31年に設立した被告○○とともに税務署の特別調査を受けたため、財産整理を行い、昭和38年ころ一応の整理を終えた。

○○公司は、法人格を有しないため、事業活動、財産の取得等を○○公司の代表者であった同全又は被告○○名義で行っていた。そして、○○公司は、被告○○の名義を使用することの対価として、昭和39年からは年間60万円、昭和46年3月からは年間120万円の名義使用料を被告○○へ支払っており、その間昭和46年1月31日には、いずれも同全が代表者である被告○○と○○公司との間で、右名義使用料に関する覚書が作成されている。

また、○○公司は、同全に対しては特に名義使用料を支払ってはいなかったが、物件1第3ないし第7の固定資産税等は、○○公司において負担し支払っていた。

昭和59年ころ、税務署の指導もあり、○○公司の財産を被告○○に組み入れることになり、昭和59年4月10日、同全の○○公司に対する地位を被告○○が買い取った。その後、昭和60年8月ころ、税務署の調査を受け、指導を受けたため、○○公司の財産を被告○○に組入れるための事務処理として、同全らは、昭和59年12月27日付けで、被告○○の取締役会において、被告○○が被告荘に1654万2820円、被告善利に117万1132円をそれぞれ支払い、被告荘及び被告善利は○○公司から脱退し、同月31日現在の○○公司の財産を全て被告○○が引き継ぐことにした旨の取締役会議事録を作成した。

昭和59年12月31日現在の○○公司の貸借対照表には、借方の建物欄に、物件1第3が池袋○○ビルとして、物件1第5の2が赤羽店舗として計上され、借方の棚卸商品欄に、物件1第4が○○団地として、物件1第7が伊東所在の各土地として計上され、借方の借地借家権欄に物件1第6の1が計上されていた。

○○公司の貸借対照表に○○公司の財産として記載されていた右各物件は、昭和61年3月31日決算時から被告○○の貸借対照表に被告○○の所有財産として計上された。

(2) 昭和58年10月1日、物件1第5の1につき、被告○○は、賃貸人角川法明との間で、賃貸借期間を20年とする賃貸借契約を締結した。同年11月19日には、右契約に伴い被告○○が支払う旨約束した更新料600万円の支払方法に関する念書を被告○○が作成した。

右契約以来、物件1第5の1の賃料は、被告○○が支払っている。

(3) 物件1第6の2は、被告○○がキャバレーとして使用していたが、昭和52年ころ、内装工事費等2500万円をかけて改装しマージャンクラブとして使用してきた。また内装工事関係等のことは、被告○○の固定資産台帳に、附属設備の項目欄に、所在有楽町支店として掲載されている。

(4) 昭和59年5月17日、同全の自宅で本件遺言書が作成されたが、物件1第3ないし第7は、遺言の証人であり遺言執行者である弁護士の原武行の意見に従い、登記手続関係ないし遺産分割手続を考慮し、同全の個人名義になっているものは全て遺言書に記載された。

同全は、遺言書に物件1第3ないし第7を記載したことから、同物件が同全所有であるとの誤解が生じることを避けるため、昭和59年11月26日、右物件が○○公司の所有である旨の覚書を作成した。

同全の遺言書に記載された物件1第3ないし第7は、相続税の申告書では相続税がかかる財産として計上されず、またこれらの物件につき一旦相続登記をした後に真正な登記名義の回復により被告○○に登記名義の移転が行われたが、これらの点について、税務署から問題にされることはなかった。

(5) 物件1第12については、被告清兆が居住用に購入する計画を立てたが、一人で代金を負担する資力はなかったため、被告荘に代金の半分を負担してもらうことにし、支払は被告○○からの借入れで充てることにした。被告○○は被告清兆らから借入れの依頼を受け、昭和56年6月15日の臨時取締役会で、被告荘及び被告清兆に住宅資金としてそれぞれ6500万円を貸し付ける旨の決議をした。

昭和56年7月3日、物件1第12につき、売主○○建設株式会社、買主被告清兆、代金1億2968万円とする売買契約書が作成された。当日、実際に契約締結に行ったのは被告清兆一人であったが、被告清兆は、物件1第12が自己の居住用であったことから、自己のみを買主として記載してしまった。

昭和57年4月20日、物件1第12の1につき、被告荘及び同清兆の持分を等分とする所有権移転登記が、物件1第12の2につき、被告荘及び同清兆の持分を等分とする所有権保存登記がされた。

被告清兆の被告○○からの借受金の返済は、被告清兆の給与から天引きで行う予定であったが、被告○○の経理の手違いで同全が死亡するまで、同全の所得から返済が行われていた。

このため、同全の相続税の申告を担当した公認会計士の松来修作は、実質課税ということから、同全から被告清兆に対する貸付金とする方法と物件1第12の贈与とする方法のうち、税務処理上は、物件1第12の贈与とするほうが無難と判断し、物件1第12を相続税がかかる財産として計上した。

物件1第12を相続税がかかる財産として計上することに関し、被告清兆は、松来修作らから物件1第12の被告清兆の所有権自体は変わらないと説得され、相続税を支払うことに同意した。

(三) (一)、(二)認定の事実によれば、物件1第3ないし第7は、いずれも同全の所有ではなく、○○公司の財産であったこと、しかるに右物件の一部につき同全名義で登記されたり、固定資産台帳の所有者欄に同全名が記載されていたのは、○○公司が組合であり○○公司名義での物件の取得が認められなかったため単に同全名義を使用したにすぎなかったものであること、また、本件遺言書に物件1第3ないし第7が記載されたのは、○○公司の財産であっても同全名義になっている物件は、同全名義から他の者へ名義変更する方法を確保しておく必要があったためであったこと、相続税申告書の相続税がかかる財産欄に物件1第12が記載されたのは、給与からの天引きが誤って同全から行われてしまったことに対処するためであったことが認められる。

したがって、原告らの主張に沿う前記甲第1号証以下の証拠によって物件1第3ないし第7及び第12が同全の所有であったと認めることはできず、他に右各物件が同全の所有であったことを認めるに足りる証拠はない。

4  請求原因5について

物件1第10の1が被告○○が同全の死亡退職金として被告荘に支払われたものであることについては当事者問に争いはない。そこで、右死亡退職金が遺留分算定の基礎となる財産に含まれるかについて検討する。

先ず、乙第30号証によれば、被告○○において、死亡退職金は、配偶者、第一子の順位にしたがい支給される旨社内内規で規定されていることが認められる。

右被告○○の死亡退職金の受給者の指定は、中華民国民法における相続人とはかなり異なるものであるから、相続による財産承継とは異なり、内規により受給を受ける者が、自己の固有の権利として被告○○から死亡退職金を取得するものというべきである。

したがって、右死亡退職金は、被相続人の遺産ではなく、被相続人からの特別受益にも遺贈にもあたるものではないから、遺留分算定の基礎財産にはならないものと解される。

以上によれば、被告荘が被告○○から受給を受けた物件1第10の1は、同全の遺留分算定の基礎財産には含まれない。

5  請求原因8は、不動産に担保権等の負担がない場合の評価額としては当事者間に争いがないが、被告らは、本件不動産には根抵当権が設定されているから、その極度額合計を控除したものが不動産の評価額になる旨主張している。

甲第2ないし第11、第22ないし第26号証によれば、物件1第1ないし第3、第7には、債務者協同組合○○○○○合作社あるいは被告○○とする抵当権あるいは根抵当権が設定されていることが認められる。

一般に被相続人を債務者として担保権が設定されている場合には、遺留分の基礎財産の算定においては、その債務額を控除すべきことは明らかである。しかし、被相続人が物上保証人にすぎない場合には、根抵当権等が実行されたとしても、物上保証人は債務者に対し求償権を取得するから、被相続人の財産の総体としての評価は、債務者に資力がなく求償権が経済的には無価値である等の特別な事情がない限り、根抵当権等の設定がない場合とかわりはない。しかるに、本件においては、同全が取得する求償権が経済的には無価値であるといった特別事情の存在を認めるに足りる証拠はないから、前記根抵当権等が設定されている点は、物件の評価額において考慮しないこととする。

二  抗弁について

1  抗弁1の事実については、当事者間に争いはない。

2  抗弁2について

被告は、中華民国民法1150条は、遺産の管理、分割及び遺言執行に関する費用は、遺産の中から支払う旨規定しているが、日本民法885条2項のような遺産の管理費等は遺留分権者が減殺によって得た財産をもって、これを支弁することを要しない旨の規定がないことから、中華民国民法においては、遺留分の基礎財産の算定に際し、遺産の管理費等を控除することができる旨主張する。

しかしながら、中華民国民法において遺留分制度が認められているのは、日本民法と同じく相続人に最低限の取得分の確保をさせるためであると解するのが相当であり、遺留分減殺によって得た財産からも相続費用の支弁をさせた場合には、最低限の取得分の確保という趣旨が全うされないこととなる。したがって、明文の規定がないとしても、中華民国民法の解釈においても、日本民法と同じく遺留分算定の基礎財産の計算においては、遺産管理費等は控際すべきではないと解するのが相当である。

よって、被告ら主張の抗弁2は、認められない。

第二乙事件について

一  被告らの本案前の主張について

被告らは、原告らの相続財産であることの確認請求は、訴えの利益がないとして却下を求めるので、検討する。

相続財産であることの確認請求は、共同相続人間に、相続人の範囲、相続分の割合等には争いがなく、特定の財産が遺産分割の対象となる相続財産であるか否かに争いがある場合に、遺産分割の前提として、当該財産が遺産分割前の共有関係にあることの確認を求めるものであり、この請求についての判決によって、当該財産の遺産帰属性を既判力をもって確定すれば、遺産分割審判の手続及びその審判確定後に遺産帰属性を争い得なくなる点において、紛争の解決が図られる点に確認の利益が認められるものである。

そして、相続の実体法における準拠法が被相続人の本国法である外国法であり、右外国法が家事審判による遺産分割の手続を予定していない場合でも、手続法は法延地の法によることができるから、準拠法である外国法が共同相続人間の遺産分割を予定するものである限り、共同相続人は、家事審判手続による遺産分割を求めることができるものというべきである。したがって、中華民国民法を準拠法とする本件についても、家事審判手続による遺産分割の前提として確定する必要がある限り、共同相続人は、争いのある財産が相続財産であることの確認を求めることができるものというべきである。

しかしながら、本件においては、同全は、自己の全ての財産についてそれぞれ特定者に相続させる旨の遺言をしている。

遺言者が個々の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言を作成した場合の遺言者の合理的意思は、何らの手続を要することなく、特定の財産を特定の相続人に単独で承継させようとするものであると解するのが相当であり、相続の準拠法が中華民国法である場合のこのような遺言は、同法1165条1項の規定にいう遺産分割の方法を定めた遺言であり、被相続人の死亡により当該財産は改めて遺産分割手続をするまでもなく当然に当該相続人に承継されるものと解するのが相当である。

したがって、仮に物件1第3ないし第12が、同全死亡当時、同全の財産であったとしても、これらの財産は同全の死亡と同時に本件遺言で指定された者に当然に承継され、遺産共有の状態とはならず、遺産分割の余地もないから、右財産について、遺産分割の前提として相続財産に属することの確認を求める利益はない。

原告らは、これらの財産に対しては、遺留分減殺請求の前提として、同全の相続財産であることを確定する必要があると主張する。しかしながら、原告らが右各財産が同全の相続財産であるとし、遺留分減殺に基づきこれらの財産個々について自己が取得したとする共有持分権の確認等を請求している本件においては、この請求に対する判決によって、原告らがこれらの財産について現に有する権利の確定を図ることができるのであるから、右権利確定の前提にすぎないこれらの財産が相続財産に属するか否かの確認を求める利益はない。

よって、原告らの相続財産であることの確認請求は、確認の利益が認められず、却下されるべきものである。

二  請求原因について

1  請求原因1については、第一の一で論じたとおりである。

2  請求原因3において、原告らは、被告○○に対し物件1第3、第4、第7について遺留分減殺を主張しているが、第一の一で論じたとおり、物件1第3、第4、第7は、同全が所有していたものとは認められないから、請求原因2、3について認定するまでもなく、原告らの被告○○に対する請求は認められない。

3  原告らは、遺留分減殺により取得した金員につき、相続開始日の翌日から遅廷損害金を請求している。遺留分減殺が行われるとその効果は相続開始に遡り遺留分権者が直接被相続人から持分権等を取得することにはなるが、受遺者が返還義務を負うのは、遺留分減殺の意思表示を受けてからであるから、遅廷損害金は、遺留分減殺の意思表示が行われた日の翌日から発生するにとどまる。

したがって、原告らの遅延損害金の請求は、遺留分減殺の意思表示が行われた日の翌日である昭和62年3月5日からの範囲で認められる。

三  抗弁について

抗弁1については、第一の二で論じたとおりである。

第三遺留分の計算

本件において、遺留分算定のための基礎財産に含まれるものは、物件1第1、第2、第8、第9、第10の2ないし3及び第11であり、その評価額の総計は、38億1561万1815円であり、一方同全には1億8925万0557円の債務があるから、遺留分の基礎財産の総額は、36億2636万1258円である。

原告らの遺留分額は、それぞれ遺留分の基礎財産の総額の12分の1である3億0219万6772円(小数点以下四捨五入、以下小数点以下の端数がでる場合同じ)となる。

被告荘は、物件1第1、第10の2ないし4、第11と第2の3分の2を取得し、その評価額総計は30億1150万7181円であり、被告清兆は、物件1第8、9と第2の3分の1を取得し、その評価額総計は8億0410万4634円である。

受遺者が遺留分を有する場合にはその遺留分を越える部分が遺贈を受けたものと評価されるが、被告荘及び被告清兆の遺留分は原告らと同額であるから、被告荘らが遺贈を受けたと評価される額は、被告荘が27億0931万0409円であり、被告清兆が5億0190万7862円である。したがって、被告荘と被告清兆は、原告各自の遺留分である3億0219万6772円を27億0931万0409対5億0190万7862で負担することになり、その額は、被告荘が原告各自に対し2億5496万3939円、被告清兆が原告各自に対し4723万2833円である。

個々の物件についての遺留分減殺による持戻し分は、右金額を、被告荘及び被告清兆が取得したそれぞれの物件にその評価額ごとの按分で割り付けることになる。

物件1第1の1ないし5並びに同第2の2及び3の個別の評価は、それぞれ一体の土地であると認められ、単位面積当たりの評価額が同一と推測されることから、別紙価格表のそれぞれの総計の評価額を物件1第1の1ないし5の面積合計若しくは同第2の2及び3の面積合計で割り、その値に個別物件の面積をかけることによって算出される。右のように計算すると、同第1の1が6億5924万2696円、同第1の2が339万5333円、同第1の3が6億8345万7057円、同第1の4が175万6207円、同第1の5が6354万2747円、同第2の2が1億0995万3323円、同第2の3が9677万6285円と認められる。

右の個別評価及び別紙価格表により物件ごとの割り振りを行うと、別紙割り振り額一欄表のとおりになる。そして、右の計算により求められた割り振り額を分子に物件の評価額を分母にすることにより、遺留分減殺により原告らが取得する各物件に対する持分等が求められる。

したがって、原告らは被告荘に対する遺留分減殺により、各自、物件1第1の1につき6億5924万2696分の5581万3619、同第1の2につき339万5333分の28万7460、同第1の3につき6億8345万7057分の5786万3685、同第1の4につき175万6207分の14万8686、同第1の5につき6354万2747分の537万9734、同第1の6につき658万7700分の55万7736、物件1第2の1につき21億4595万8212分の1億2112万2509、同第2の2につき1億0995万3323分の620万6003、同第2の3につき9677万6285分の546万2262のそれぞれ共有持分権を、同第11の1につき1470万分の124万4550、同第11の2につき665万分の56万3011の準共有持分権を取得し、同第10の2につき14万3927円、同第10の3につき11万8223円、同第10の4につき5万2534円の支払い請求権を取得した。

また、原告らは被告清兆に対する遺留分減殺により、各自、物件1第2の1につき21億4595万8212分の4201万7619、同第2の2につき1億0995万3323分の215万2873、同第2の3につき9677万6285分の189万4868のそれぞれ共有持分権を、物件1第8の1につき495万分の29万0761、同第8の2につき42万分の2万4671、同第8の3につき118万分の6万9313のそれぞれ準共有持分権を、同第9の1の1301万8737分の76万4716を、同第9の2の6623分の389を取得し、物件1第9の3につき1万7622円の支払請求権を取得した。

第四結論

以上の事実によれば、甲事件における原告の被告荘に対する請求については、右に認定した持分割合は原告ら請求を越えるものであるから原告らの請求は理由があり、被告清兆に対する請求は、右に認定した持分割合の範囲内で理由があり、乙事件における被告荘に対する請求については、物件1第11についての準共有持分の確認請求並びに金員支払請求については31万4684円及びこれに対する昭和62年3月5日から支払済みまで年5分の割合による範囲内で理由があり、被告清兆に対する請求については、物件1第8についての準共有持分確認につき右に認定した持分割合の範囲内で、物件1第10の1、2を有することの確認は右の認定した持分割合の範囲内で、金員支払請求は1万7622円及びこれに対する昭和62年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める範囲内でそれぞれ理由があるから認容し、物件1第3ないし第12につき同全の相続財産であることの確認請求については不適法であるから却下し、その余の請求についてはいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法89条、92条本文、93条1項本文を、仮執行の宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小田原満知子 裁判官 端二三彦 唐木浩之)

別紙〈省略〉

中華民国民法

第1141条(同順位相続人の相続分)同一順位の相続人が数人あるときは、人数に応じて均等に相続する。ただし、法律に別段の規定があるときは、この限りでない。

第1144条(配偶者の相続分)

配偶者は、互いに遺産を相続する権利を有する。その相続分は、左の各号によって、これを定める。

1.第1138条に定める第一順位の相続人と共同相続をするときは、その相続分は、他の相続人と均等とする。

2.第1138条に定める第二順位又は第三順位の相続人と共同相続をするときは、その相続分は、遺産の2分の1とする。

3.第1138条に定める第一ないし第四順位の相続人と共同相続をするときは、その相続分は、遺産の3分の2とする。

4.第1138条に定める第一ないし第四順位の相続人がないときは、その相続分は、遺産の全部とする。

第1165条(遺言による分割の方法)

〈1〉 被相続人が、遺言で、遺産分割の方法を定め、又は代って定めることを第三者に委託したときは、その定めるところに従う。

〈2〉 遺言が、遺産の分割を禁じたときは、その禁止の効力は、10年をもって限度とする。

第1223条(遺留分権利者とその遺留分)

相続人の遺留分は、左の各号の規定による。

1.直系卑属の遺留分は、その相続分の2分の1とする。

2.父母の遺留分は、その相続分の2分の1とする。

3.配偶者の遺留分は、その相続分の2分の1とする。

4.兄弟姉妹の遺留分は、その相続分の3分の1とする。

5.祖父母の遺留分は、その相続分の3分の1とする。

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